- ゲームを作る
当たり前の話ですが,ゲームプログラマの仕事の1つはゲームを作ることです.
ただ,ゲームを作る,と言っても最近は色々な知識が必要なため,専門家に分かれていたりします.
例えば,プレイヤーを作る人,ノンプレイヤーを作る人,UIの挙動を実装する人,カメラの動きを制御する人,AIを実装する人などなどです.
プレイヤーやノンプレイヤーを作る人の場合,3Dモデルの読み込みや表示の制御,モーションの制御,モーションに合わせたサウンドの制御,移動による衝突の制御,など色々な知識が必要になったりもします.
小規模なチームの場合,一人で色々なことをしなければならない場合もあります.
最近は,ゲームエンジンが細かい部分はサポートしてくれますが,それでも,その機能はどういった機能で,どういったことが出来るのか,どう設定すれば良いのか,といった知識は必要なので,日々の学習は必須です. - 仕様を決める
仕様を決めるのは,プロデューサーだったり,ディレクターだったり,ゲームデザイナーだったり,プランナーだったり,そういった人たちの仕事だと思うかもしれませんが,最終的な仕様はソースコードに実装されたものなので,仕様を決めるのもプログラマの仕事になります.
もちろん好き勝手に,こっちの方が面白そうだから,と変えたりするわけではありません.
他の職種の人は,言った仕様がどれくらい実装が大変なのか,正確には分かりません.また,実現したいことと仕様が合致しているとも限りません.よくよく聞いてみると,別の方法で実装した方が楽だし,実現したいことも出来る,という場合もよくあります.
プログラマからすると簡単な実装に思えることが,他の職種からは大変そうなことに思えるので,頼むのは申し訳ない,なんて思っている場合もあるのです.その逆もあります.
ですので,お互いに足りていない情報を確認し合い,少なくともプレイ感覚を確認できる形まで実装するのに必要な仕様を固めるのもプログラマの仕事なのです. - PCトラブルシューティング
これは,ある程度規模の大きな会社だと,別途ヘルプデスクなどあるかもしれませんが,ちょっとしたPCのトラブル,例えば電源が付かないとか,そういった簡単なトラブルの解決も求められたりします.
電池切れとか,電圧や電流が足りない,といった物理的な問題の場合もあるので,この辺は,ソフトウェアの問題ばかり調べていてドツボにはまることもあるかもしれません. - ワークフローの構築
どういうデータを作って,どういうフォーマットで,どこに提出するのか,というワークフローを構築するのもプログラマの仕事です.
これは仕様を決めるのと似ていて,データを提出するアーティストやプランナーが作業しやすく,かつ,プログラマとしてもなるべく扱いやすいデータをどうするか決める必要があります.
また,ミスしやすいデータがあるのであれば,手動でチェックする機能を用意したり,バージョン管理に載せる前に自動でチェックするための仕組みを用意するのもプログラマの仕事です. - CI
昨今流行りのCI環境の構築もプログラマの仕事です.なので,サーバーやファイヤーウォールなどに関する知識が必要になったりします.
もちろん,大規模なプロジェクトや会社になれば専門家もいるでしょうが,小さい規模だと自分でやる必要があったりします.
普段はデバッグ機能ありの状態でゲームを作っていて,いざ本番向けの状態のゲームをビルドしようとしたら,コンパイルエラーだらけ,という事態を避けるためにも,自動ビルドによるチェックなどは重要です. - ライセンスチェック
色々なミドルウェアを使ったり,組み込みたいという話になった場合の,最初の段階でのライセンスチェックもプログラマの仕事です.もちろん,最終的には法律の専門家にお任せするのが良いのですが,原則利用してはいけないライセンスのミドルウェアなどもあります.そういったものが要望に上がった場合,その時点で弾くのはプログラマの役目です.
また,たまに拾ってきたソースコードを組み込んでしまうようなプログラマもいます.そういった人がいないか気にするためにも,多少はソフトウェアライセンスやオープンソースに関する知識も必要になります. - エンジンの選定,改造,実装
昨今,多くの企業がゲームエンジンを利用しているので,どのゲームエンジンを利用するのか,選定する作業が必要になります.エンジンによって得意なこと,不得意なことがあるので,ある程度色々なエンジンに関する知識が求められます.
また,エンジンによっては改造可能な部分があったりするので,必要に応じて改造することも求められます.
企業によっては,自社エンジンを持っている場合があり,そういった企業にいる場合は,エンジンの開発側に回ることもあります. - 技術的なアドバイス
例えば,モバイルであれば,今度出る端末はどんな特徴があって,作っているゲームのチェックのために購入する必要があるのか無いのか,といった相談をされることがあります.
ゲーム専用機であれば,最近はマルチプラットフォームだったりするので,こういう仕様ってどのハードでも実現できるのか,といった相談を受けることがあります. - スケジュールを立てる
実装する内容が決まったら,どれくらいの期間で出来そうか,というスケジュールを立てる必要があります.これは,プログラマの経験や知識によって大きく変わるので,実際に担当者に予想を出してもらうのが重要です. - スケジュールを調整する
これは,全てのゲームプログラマがやるわけではないですが,他の職種の作業スケジュールに合わせて,実装する内容をいつまでに実装するのか,出来なさそうであれば,他の職種の作業タイミングをズラしてもらうのか,担当者を変えるのか,といったスケジュール調整も必要です.
リードプログラマや,各専門分野のリードプログラマになると,こういったことも求められます. - チーム内のコミュニケーションツールの整備
最近は,Microsoft TeamsやSlackなどコラボレーションツールが充実してきていますが,利用できない場合には,自分たちでSlackクローンを用意したり,その他のコミュニケーションツールを導入する必要があったりします. - ドキュメントの整備
ゲームプログラマの仕事は,ゲームを作るだけではありません.開発環境を構築するためのドキュメント,ワークフローに関するドキュメント,セーブや課金に関する資料整備,開発中の便利機能やQAを楽にするための機能に関するドキュメントなど,思っている以上に文章を書くことがあります.
このドキュメントを読むのはプログラマだけでなく,他の職種向けだったりする場合もあるので,これくらいは分かるだろう,という前提が間違っていることも多々あります.
例えば,コマンドラインを実行してください,と書いても,プログラマ以外はそもそもコマンドラインって何なのか,ということだってあり得ます.
プログラマ以外にも通じる文章の書き方を学ぶ必要があるわけです. - バグの原因調査
最終的に,プログラマ以外の作業が原因と判明することも多々ありますが,だいたいの原因不明のバグの調査は,まずプログラマがやることになります.
例えば,キャラクターがおかしな動きをする,という話になったとき,そもそもモーションのデータがおかしいのか,モーションの指定がおかしいのか,はたまた特定の条件の場合のみモーションの計算がおかしいのか,と色々と原因が考えられます.
データがおかしい,ということになった場合でも,じゃあどう直すのが良いのか,ということが分からない場合もあります.
そのためにも,ゲームプログラマは,データの直し方,もある程度知っている必要があるのです.MayaやBlenderといったDCCツールの使い方は分からなくても,この関節の回転のデータがおかしいので,そのデータを直してみてください,というくらいなら出来るはずです. - ツールの開発
開発中に問題のあるデータが見つかった場合,それを一括で修正するツールを実装する場合があります.
CIのために,自動でデータをチェックするツールを実装する場合もあります.
他にも,開発中にはいろいろな理由で色々なツールを作ることがあります.
プログラマしか使わないツールであれば,コマンドラインで作ってしまうのも手ですが,他の職種も扱うツールの場合,GUIがあった方が良いこともあります.その場合,さっとC#などでツールを作れる知識も必要になります.
他にも,例えばddsの画像をpngに変換する必要がある,というようなデータフォーマットの変換ツールを作ることもあります.この辺はややこしいので、既存のツールを内包する形にすることが多いと思いますが,その場合,どういった既存のツールがあって,利用できそうか,という知識が必要になります.
Excelなどを改造してツールにすることもあるので,VBAなんかの知識もあると役立ったりします. - 流行りのゲームやアニメに関する情報源
ふわっと,何かこういうイメージのゲームってあるか,という質問だったり,こういうアニメの表現って出来るか,であったり,何か他のものを参照するための情報を求められることもあります.
この辺は,ゲームプログラマに限らないのですが,実装が絡んできそうな内容の場合,やはりプログラマに質問が来たりするので,実際に詳しく知っているわけではなくても良いのですが,特徴的なゲームだったり,アニメだったりは名前くらいは押さえておいたほうが良かったりします. - 処理時間の改善
FPS(1秒当たりの画面の更新回数)が低いと,カクカクとした動きに見えたり,反応が悪いように感じたりするので,時間がかかっている処理を改善するのもプログラマの仕事です.
処理時間を短くするには,原因を調査するためのプロファイラの使い方の知識であったり,原因が分かった際の対処方法に関する知識が必要だったりします.
例えば,特定のAPIの呼び出しがブロックしていて時間がかかっている場合,非同期に呼び出せるAPIが無いか,呼び出せるなら,その部分を非同期にできないか,といったことを考えたりします.
他にも,そもそもアルゴリズムが悪い場合もあるので,ある程度,その分野の基本的なアルゴリズムは知っておいた方が良いでしょう.例えば,単純な幅優先探索に置き換えるだけで劇的な改善をしたこともあります.
また,処理時間を短くするのは,何もゲームの中だけの話ではありません.ツールの起動にやたらと時間がかかったり,キャラクターの設定に関するデータの出力にやたらと時間がかかったり,といった場合を改善するのもプログラマの仕事です.
それまで1分ほどかかっていた作業が数秒程度になった,なんてこともあります.
思い付く範囲でダラダラと書いてみたところ,結構な量になってしまった.
書いてみて,結構幅広い知識を求められるよなぁ,と.
もちろん,最初から全部知っていろというわけではないのですが,スペシャリストになるのが難しそうであれば,色々と知っていた方が選択肢は多くなるのかなぁ,という気がします.
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