2023年1月4日水曜日

継続的デリバリーのソフトウェア工学の感想

新年あけましておめでとうございます.
今年の抱負として,月に一冊は技術書の感想を書いてみようかな,と思い,長いこと更新していなかったブログを更新することにしました.

今回読んだのはこちら.
継続的デリバリーのソフトウェア工学(日経BOOKPLUS)

継続的デリバリーの,となっていますが,読んだ限りでは元のタイトルのModern Software Engineeringを実現する方法として継続的デリバリーも推している,という感じなのかな,という気がします.

序文では,この書籍は次のようなものだと述べています.

ソフトウェア工学に工学を取り戻す試み

つまり,現在のソフトウェア工学は工学になっていない,ということです.正確には,皆が誤解しているというところなのだと思います.実際,この書籍で紹介される多くの概念は過去に提唱されてきたものがほとんどです.

そのための流れとして,まず科学と工学の違い,そしてソフトウェア工学とはどうあるべきなのかが定義されます.そして,工学であるために必要となる学習と複雑さの管理 について説明し,最後にそれらのためのツールというかアイデアを紹介しています.

この書籍が良いところは,既に様々な書籍で紹介されているアイデアを整理し,それらがどう関係しあって良い結果をもたらすのか,ということが具体例も交えつつ解説されている点です.

例えば,テスト駆動開発(Test Driven Development, TDD)を用いると,疎結合な設計になりやすいであるとか,関心事の分離により変更が容易になるとかです.

TDDや継続的インテグレーション(Continuous Integration, CI),継続的デリバリー(Coninuous Delivery, CD)などは,良い設計をする方向への圧力となるのだと.

また,プログラマはどうしても個々人のレベルアップによる開発を夢見がちですが,それでは大規模化が困難であることにも触れています.ある程度の規模のソフトウェア開発に関わっている人ほど,その点については何となくでも気付いていると思います.

TDDとなると,どうしてもテストを書くのが面倒だと言う人は多いのではないでしょうか? しかし,この書籍を読めば,何故TDDが必要なのか,単純に単体テストではダメなのか,という質問をされた場合に返答できるようになると思います.

雑に要約すると,TDDでのテストは仕様を記述しているのであって,バグを検出することが第一の目的ではない,ということです.

他にも色々とありますが,この書籍ではTDDやCI,CD,他にはマイクロサービスやDevOpsなどによってもたらされる利点が語られていますが,そのものについては既知のものとして詳しく触れてはいません.

1つか2つソフトウェアの開発経験を積んだ後,まずはこの書籍を読み,知らない概念についてはそれぞれの参考文献を読む,という読み方をするのが良いと思います.